【パート2の続き】
「力抜いて~頑張ってね~。もう少しですよ、我慢して~。」
ギシギシ……という音がまた激しくなり、患者さんの声が「んあっ……はっ……いやぁぁ……」と高くなり、何か激しい波が来ているような気配がする。限界を超えたような感じが伝わってくる。
心拍モニターと思われるピッピッピッという電子音が速くなり、何か液体を吸い込むような「ジュルジュル」と湿った音まで混ざってくる。
(何をされているの…..?)私は唇を強く噛みしめた。
(次は私……こんな透け透けのガウン姿で、乳首を勃起させたまま、あんな声を……初めてなのに……怖い……こんなに暴れて、叫んで、でも止まらないなんて……逃げられないの? どんな処置をされるのか……恐怖で体が震える……)
しばらくして、前の患者さんの声が弱々しくなり、処置が終わったらしい気配がする。先生の声がうっすら聞こえてくる。
「お疲れ様でした、これで完了ですよ。」
ベルトが外されるようなカチャカチャという音が続き、患者さんのぐったりしたような吐息とうめき声が聞こえる。
看護師の声が優しく響く。「はい、じゃお股を拭きますね、触りますよー。」
患者さんがかなりゆっくりと動くような音がし、中待合側の扉ではなく、部屋の奥にある別の扉が開く音がする。そこから休憩室へ移動している様子で、足音が遠ざかり、扉が閉まる音が響く。部屋が静かになり、換気扇の音だけが残る。私は息を潜めて待つ。
時間が経つのが遅く感じ、心臓の音が耳に響くほど緊張する。しばらくしてから、ようやく看護師の声がかかる。「次の方、どうぞ。こちらへ。」名前を呼ばれ、無言で内診室のドアを開けると——
部屋の中の空気が、甘く、重く、濃厚に私の鼻を突いた。芳香剤の匂いが漂っているはずなのに、それをかき消すように、甘ったるい生臭さが部屋全体に染みついている。
換気扇が回っている音が聞こえるのに、壁や天井、床にまでその匂いが染み込んでいるようで、息を吸うたびに胸がむかむかする。嗅いだことのない、何とも言えない匂い——それは女性の蜜のような、発情した雌の匂いだと直感的にわかった。
部屋はシンプルで、全体的にベージュの壁紙、窓は無く、間接照明がされており、少しだけ薄暗くなっている。婦人科の代表的な椅子、内診台が一台だけ。
通常婦人科には患者さんと医師の間にカーテンがあり仕切られているが、この部屋にはそのようなカーテンがない状態で、カーテンがない状況下で内診台に座り開脚させられることを想像して強い恥ずかしさを覚える。戸惑いも覚える。
内診台には、白い使い捨て防水シートが張られていた。光を反射して少しテカテカと光り、前の女性の残した蜜の染みが、べっとりと残っている。透明で白濁の混じったドロドロの液体が、シートの上にべっとりと広がり、糸を引いて乾きかけていた。
私は息を飲んだ。(……これ……さっきの人の……絶対に、あんな風になりたくない……恥ずかしいから……絶対に、そんな姿は見られたくない……)看護師がすぐに気づいて、「あ、ごめんなさい。すぐ新しいシートに交換しますね。」と言いながら、素早くシートを剥がし、新しいものをピンと張り直してくれた。
でも、交換されるまでの数秒間、私はその痕跡をしっかり見てしまった。心臓が激しく鳴り、ドキドキが止まらない。瞳が大きく揺れ、指先が小さく震えた。
交換された新しいシートの上に私が腰を下ろしたことを確認すると、看護師が「椅子が動きますので、手すりを掴んで動かないでくださいね」と声をかけた。看護師が指先と胸に電極を装着し、心拍モニターへ繋げる。「バイタルを測りますね」と言いながら丁寧に取り付ける。看護師が「先生、準備できました」と医師を呼び出し、スイッチを押した。
「ピッ」との確認音のあと、内診台から、アナウンスが流れる。
『上昇します。背もたれが倒れ、脚が開きます。』
背もたれがゆっくり倒れ、脚の台が左右に広がり始める。
脚が、ゆっくり、ゆっくりと開かれていく。これ以上ないくらい——股関節が限界まで広がる角度まで。いわゆる赤ちゃんを産む体勢、いわゆるM字開脚の姿勢にされてしまった。
その直後、ゴム底の靴のような足音が近づいてきて、先生がカルテを見ながら話しかけてくる。
「こんにちは、佐藤さん、では処置の準備をはじめていきますからね」
「緊張しないで、大丈夫ですから」と声をかけてくれる。
優しそうな雰囲気があり、少しだけ安心する。
その瞬間、看護師がもう一つのスイッチを入れた。「パッ……」天井から強力な白色ライトが点灯し、局部を容赦なく照らし出した。
【パート4へ続く】
