集団検診としての婦人科検診

大学では、毎年春と秋の2回、全女子学生を対象とした婦人科検診が実施される。これは健康管理の必須項目であり、学生たちは「自分の体を守るための必要な検査だから」と繰り返し指導される。欠席は単位認定に直結し、進級・卒業に影響するため、誰もが受け入れるしかない。

検診当日の朝、指定された旧講義棟に集められた女子学生たちは、まず受付で名前を確認した後、別室に案内される。そこで「検診の効率を上げるため」と告げられ、スカートと下着をすべて脱ぐよう指示される。制服の上着とブラウスはそのまま着用した状態で、下半身は完全に露出したまま待機列に並ばされる。冷たい床に素足で立ち、互いの視線を避けながら順番を待つ。誰もが顔を赤らめ、両手で前を隠そうとするが、看護師から「手をどけてください。検査の妨げになります」と淡々と注意される。

待機スペースはカーテンで仕切られているものの、隙間から隣の学生の震える太ももや、必死に耐える表情が見えてしまう。列が進むたび、内診台の金属音と、抑えた吐息が響く。誰も大声を出さない。周りに友だちや後輩がいるかもしれないからだ。声を上げれば、他の誰かがさらに恥ずかしい思いをする。それがわかっているから、みんな唇を噛んで耐えるしかない。

「次の方、どうぞ。こちらへ」

名前を呼ばれた学生は、無言で内診台に向かう。足を大きく広げて固定されると、医師がまず問診を始める。「性経験はありますか?」

「…ありません」

その一言で、検査方法が変わる。膣からの検査は行われず、代わりに肛門からの内診が実施される。医師の指が冷たいジェルを塗り、ゆっくりと挿入される感触。違和感と圧迫感が一気に押し寄せ、思わず体が硬直する。「んっ…!」と小さな声が漏れても、すぐに看護師が「深呼吸を。力を抜いてください」と囁く。痛みや羞恥が限界に達しても、逃げ場はない。足は固定され、体は動かせない。周囲の視線と音が、すべてを現実のものとして突きつける。

検査が終わると、ゆっくり足を下ろし、震える手で下着とスカートを着用する許可が出る。顔は真っ赤で、視線を床に落としたまま次の人に場所を譲る。誰もが同じ経験を終え、放心したように会場を出ていく。

性経験の有無にかかわらず、誰もがこの検診を通過する。スカートを脱がされ、下半身を晒したまま待たされ、必要とされる検査をただ受け入れる。それがこの大学の日常であり、誰もが繰り返し経験する「必要なこと」なのだ。

検査が終わると、ゆっくり足を下ろし、震える手で下着とスカートを着用する許可が出る。顔は真っ赤で、視線を床に落としたまま次の人に場所を譲る。

検診を終えた学生たちは、会場を出て廊下を歩く。誰もが無言で、足取りが重い。体はまだ熱く、下腹部に残る違和感が消えない。さっきまで晒していた自分の下半身を思い出すたび、胸の奥が締め付けられるように痛む。誰にも言えない。友だちにさえ「どうだった?」と聞かれても、「…普通だったよ」と小さく笑うしかない。笑顔の裏で、頭の中はぐちゃぐちゃだ。

「あんなところで、あんな風に…見られて、触られて…」 心の中で何度も繰り返す言葉が、喉までせり上がっては飲み込まれる。恥ずかしさが波のように押し寄せ、涙がにじみそうになる。でも泣けば周りに気づかれる。気づかれたら、もっと惨めになる。だから、必死に表情を保つ。トイレに駆け込んで鏡を見ると、頰はまだ火照り、目はうつろだ。自分の体が、さっきまで他人の手に委ねられていた事実が、信じられないほど現実的で、吐き気がする。

それでも、午後の講義には出なければならない。座席に座ると、足を閉じても閉じても、さっきの固定された姿勢がフラッシュバックする。隣の男子学生が普通に話しかけてくる声が、遠くに聞こえる。誰も知らない。誰も気づかない。でも自分だけは、今日のことを一生忘れられないだろうと思う。

検診は終わったはずなのに、心の中ではまだ続いている。必要な検査だったから。大学のルールだから。毎年繰り返される、この日常の一部だから。終わりはなく、ただ次の検診まで、この記憶を抱えて生きていくしかない。

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